「ステレオタイプなオタク」というのはもう都市伝説なのではないだろうか

 マンガなどでは存在は確認されているものの、実際には(少なくとも都内では)絶滅しつつあるものに、「リーゼント、変形学ランなヤンキー」がある。これと同じく、「デブで微妙なファッションでコミュニケーションが取れなくて空気が読めないオタク」というのも絶滅しつつあるのではないだろうか?

 反論もあろう。たとえば休日に秋葉原に行くと、先に挙げたようなステレオタイプなオタクを多く見かける。しかし、そのような方々の多数は、よく見ると結構な年齢の方が多い。少なくともそういう人で10〜20代前半と思われる人はほとんど見たことがない。平日に秋葉原に行ってみると、その傾向はより顕著である。

 ここから、少なくとも東京では昔からステレオタイプなオタクだった人がそのまま高齢化し、また「若手オタク」はそれとはまったく異なる生態を持っているのでは、との仮定が浮かび上がる。

 オタクというと、まず思い浮かぶのがアニメだ。しかし、現在の若者で「アニメ=キモい/ダサい」というイメージを持っている人は多くない。だいたい、あれだけ世間で騒がれるジブリ作品だってアニメだし、最近では話題になるアニメ映画も少なくない。アニメのようにかつてはオタク専門と思われていた特撮ドラマの分野でも、現在では仮面ライダーや戦隊モノなどに代表されるような、大人のファンを多く持つ作品が増えている。

 つまり、アニメや特撮、ゲームなど、かつては「オタク専門」だったものに対し、一般人がそれを見ることに違和感を持たなくなっているのである。そうすると、オタクコミュニティにも一般人があふれることとなる。

 ステレオタイプなオタクが減っているのは、そのような「一般人のオタク化」が影響しているのではないだろうか。オタクはかつてはオタクとしか群れなかった。そのため、独自の「オタク文化」が醸成されていた。ところが、現在はオタクと一般人が交流を持つ機会が増えている。そのため、グループの中にさまざまな文化が流入することになり、それによりオタクの一般人化が進んでいるのではないだろうか。

 あと、外見面についてはユニクロなど廉価で十分なデザイン、品質を持つブランドの登場が影響していると思われる。「ファッションを気にしない、実用性・コストパフォーマンス重視」のオタクにとって、ユニクロは実用性・コストパフォーマンスの点で十分な選択肢だ。そのうえ適当に来ても極端に変なことにはならない。

 この傾向がますます進めば、オタクは先に挙げた「ヤンキー」のように、「日本のどこかに存在するとは言われているが、実際にはどこにも存在しない」ものになっていくのではないだろうか。まじめなテレビ番組にステレオタイプなオタクが登場し、画面内で有識者が真剣にそれを嘲笑しているのを見て「こんな奴いねーよ」と総突っ込みする日も遠くない。